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包頭に光溢れる

1.包頭

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包頭の起業家であるクリ-ニング店

包頭は、内モンゴル自治区の大都市の1つで、面積2.8平方キロ、人口230万人、ソビエト崩壊前は、ソ連からの戦車の発注景気で湧く鉄鋼業中心の産業都市であった。戦車製造の中心であった国有企業「第一機械」は、受注減による規模縮小、さらには90年代後半以降の国策による国営企業民営化の動きの中で徐々に解体され、その不況からいかに立ち直るかが、包頭の過去20年来の最優先事項であった。しかしながら、国際競争に打ち勝つための国有企業改革推進に当たり、中央政府は、国有企業からの解雇者である下崗労働者(シアガン)対策として所謂「3本の保障線」(再就職サービスセンターで3年間基本手当ての支給、失業手当の支給、及び生活保障救済金の支給)を打ち出したものの、海外からの投資熱に浮く海岸部の上海のような大都市はともかく、実際問題として雇用の機会に明るい見通しの無い包頭のような地方都市では、一旦国有企業から解雇された者は諸手当の受給期間が終われば収入の当ての無い紛れも無い失業が待ち受けているのである。

日本のILOに対する資金提供によるマルチバイプロジェクト、ILO/Japan Inter-country Project on Strategic Approaches toward Employment Promotion(通称 Japan PEP)は1989年以降、ミクロ、及びマクロの政策レベルで雇用創出を支援する目的で、タイ、フィリッピンで開始され、次いで1993年以降、パキスタン及びバングラデッシュで実施、1997年から中国での展開が始まった。プロジェクトは当初から中国労働社会保障部との密接な連携の下、地方における再就職困難な下崗労働者をターゲットに、彼等の零細企業設立を支援する目的でスタートした。第一フェーズの1997~2000年では、3県の23地方において事業展開し、これらの目覚しい成功を踏まえて、2000~2004年の第2フェーズとして包頭、張家口及び吉林の3市におけるプロジェクトが開始された。第1フェーズの当初、プロジェクトの効果にどちらかといえば懐疑的であった労働社会保障部及び各地方行政当局さらには対象である下こう労働者自身も、事業の展開とともに次第にその実質的な効果を認め、積極的に協力し参加し始めた。第2 フェーズは、労働社会保障部の、所謂SYB(Start Your Business)プロジェクトの有効性についての基本的認識を前提に、Japan PEPをその導入インセンティブとしてさらに活用したいという強い意向と要請を背景にしたものであった。
プロジェクトの手順は、候補者を選択しこれにSYB訓練を受講させ十分なコンサルティングの中で本人に最も相応しい企業を見出して、それについてのクレジット保障(Credit Guarantee)による資金援助を与えて、以降継続的に技術面等の支援を与えつつ独立の企業家として育てる、という方式である。この方式が成功するにはいくつかの条件があるが、最も重要なのは一貫した支援体制を確立することである。即ち、関係各機関との連携を図り、全体を監督する全国レベルでプロジェクトの運営委員会(National Project Steering Committee)を作り、その下に実質的な指導、監理、評価を担当する全国レベルのプロジェクト実施作業グループ(National Project Implementation Working Group)、中間で相互連絡に当たる県労働局(Provincial Labour Bureau)、さらにその下に、実施の母体となる市レベルのプロジェクト監督、指導グループ(Project Advisory/Leading Group)及びプロジェクトのコーディネーター(Project Coordinator)が仕事をする市レベルのプロジェクト事務所(City Project Office under Employment Bureau)という縦の系列が確立され、その各部分が適時的確な支援を相互に連携しつつ継続的に行う、ということである。金融面では、従来のマイクロクレディット(Micro Credit)方式ではなく、一般の銀行と借り手の間に信用保証会社(Credit Guarantee Company)という新しい機関を立ち上げてローンの限度を拡大し、より大きな事業への展開を可能にしたことが、プロジェクトへの信頼度を飛躍的に高める結果となった。

1月9日、包頭市労働センターの会議室で、云(Yuu)副市長、范(Fan)自治区雇用労働局長等が説明したところによれば、2003年末時点で、市全体では、SYB訓練は23期39班を数え、下崗労働者の参加は3536人、内3137人が次の段階の訓練に応募、訓練を終了して企業家候補として331人が選抜され、最終訓練を第7期15班として卒業、内265人が実際に企業を成功裏に立ち上げ、全体で2918人の労働者を雇用し、年間1億1925万元の売り上げ、1548万元の利益を上げた、とのことであった。これ等の企業家、雇用された労働者の中には下崗労働者であった者も数多く含まれている。なお、同時点における下崗労働者の数は包頭市全体で5万人であった。包頭市ではこの実績に自信を深め、2004年には、SYB訓練生2000人、それによる雇用増加2000人を目標として設定した。
包頭市の場合、それまで張家口及び吉林地域ではなかった注目すべき新しい動きが見られた。企業家自身が自分達の組織を立ち上げたのである。「包頭市企業家創業促進協会」は2003年1月からSYB訓練を終え企業立ち上げに成功している200余名の会員で全く自発的にスタートし、会員同士の連絡、相互支援の機能を果たしており、今後はビジネスの一層の拡大のため会員相互間のビジネス取引促進、ローン等の新設をも視野に入れているとのことであった。この協会は、中国の既存の労使団体からは今のところ全く独立しているが、他の地域への波及、連携、そして全国的団体への発展など、計り知れない可能性を含んでいるように思われる。

ミッション一行は1月11日、6つの成功企業を視察した。製麺業、美容学校、幼稚園、清涼飲料水製造販売業、ビル清掃業、クリーニング業、化粧品販売業と規模も形態も実に多彩であった。個性豊かな面々が、何れもSYBの訓練課程で、本来の訓練だけでなく、そこにおける色々な人との出会いと絆を引き続き有効に活用しており、年齢や背景に関係なく若々しく活動的で、他方、訓練を通じてしっかりdisciplineはされているとの印象だった。
その夜、一行は協会の設立1周年記念の新年会に招待され、会員の家族を含む300名近い人々の心の籠った長めの挨拶、やたらに上手い歌、我々も巻き込んだ踊り、エンドレスな乾杯、そして一人一人との抱擁という熱烈な歓迎振りに身も心もへとへとに酔い痴れてホテルに戻ったのであった。
翌朝5時、真っ暗で摂氏マイナス20度のかなりしばれる空港への道すがら、この包頭の起業家達の手ごたえを中国のほかの地域を始め、アジアの他の国々にも伝え、育てていければという思いに強く捕らわれていた。空港のチェックインカウンターに着いててみると、なんと我々が訪問した企業家達が総出でわざわざ見送りに来てくれていたのだった。

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